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INTERVIEW

TUHなヒトビト
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臨床研究を下支えするデータマネージャー 「正解がない仕事」にやりがい感じる
臨床研究を下支えするデータマネージャー 「正解がない仕事」にやりがい感じる
TUHなヒトビト 2024.09.09

臨床研究を下支えするデータマネージャー 「正解がない仕事」にやりがい感じる

臨床試験データセンター データマネージャー|鈴木貴世

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出身大学では比較言語文化学を専攻していた鈴木貴世さん。全く異なる分野から臨床研究の職に転身した背景には、医療に関わりたいという学生時代からの強い思いがありました。2011年にCRIETO(*1)の前身となる東北大学未来医工学治療開発センターに入職した鈴木さんは臨床試験データセンターの初期メンバーであり、現在はデータマネジメントグループのリーダーとしてチームをまとめ、新人の指導的立場としても活躍中です。小学1年生の息子を持つ母でもある鈴木さんは、休日には自身の息抜きも兼ねて、子どもと過ごす時間を大切にしています。

CRIETOに入職したきっかけと臨床試験データセンターでの仕事内容を教えてください。

もともと医療に携わる職に就きたいと思い理数系の高校に入りましたが、その後、大学では人文学部を選択し全く別の道に進みました。それでも医療に携わりたいという思いが残っている中で、東北大学で募集していたデータマネジメントという仕事を知り、医学系資格を持っていないことで不安もありましたが、臨床研究という形で医学に携わることができるこの分野に思い切って挑戦してみようと思ったのが、データマネージャーの仕事を始めたきっかけです。
現在データセンターはデータマネジメント、モニタリング、統計解析、医療情報管理という4つのグループに分かれて業務を行っています。私が所属するデータマネジメントの業務は、臨床研究で得られたデータの信頼性を担保するための品質管理業務となります。研究計画書の作成段階から研究者との協議に参画し、データ収集方法の決定や、データ入力用システムの構築などを行います。研究が開始されてからは、データ収集の進捗管理やデータレビューなどを行い、最終的な研究データとしてまとめて統計解析担当者に引き渡します。
研究データを解析担当者に引き渡す前の、最後にデータに触れる立場となるのがデータマネージャーです。データの解析中にデータに関する疑義事項が生じることもあるので、私たちデータマネージャーはデータの結果をまとめるだけではなく、なぜそう判断したのかなど、確認結果の根拠を記録に残しておくことを心がけています。

臨床研究のデータを管理する上で苦労していることはありますか。また、この仕事のやりがいも教えてください。

データマネージャーの業務は幅が広く、また正解がない仕事である点が苦労するところです。例えばデータレビューでは、データ間の矛盾を確認し研究者に問い合わせを行いながら、解析に使用するデータをきれいな状態にしていきます。この過程で、研究開始前の段階では想定していなかった問題が発生することが多く、状況に応じた最善の対応方法について判断に迷うことがしばしばあります。また、対象疾患についての病態理解や、検査値に関する正常値の範囲など、医学の専門知識がなければ判断に苦慮する場面も少なくありません。
しかし、CRIETOの成長と共にデータセンターも大きくなり、組織化されてきました。私が入職した当時は、データマネージャー数人とデータセンター長の山口拓洋教授だけで業務を担っていましたが、現在はデータマネジメントの他に、モニタリング、統計解析、医療情報管理といった4つのグループに分かれ、それぞれの専門メンバーが共同して業務に取り組める環境となっています。データマネジメントのグループにも、医師、看護師、臨床検査技師などさまざまな専門資格を有するスタッフが加わりました。そのため、研究運用中に発生した問題も、各職種の観点で意見を出し合い、解決への糸口を見出せるようになっています。
一つの研究でデータをまとめるまでに、多くの場合は数年かかります。私が関わった研究の中では、7年程度を要したものもありました。それだけの長い時間をかけて、研究参加施設や関係者と密にコミュニケーションを取り続け、ようやく解析結果としてまとめられるわけですが、その時には数年分の苦労が報われた思いで、達成感を感じます。

休日はどのように過ごされていますか。また、今後の目標なども教えてください。

小学1年生の息子がいるのですが、夫婦共働きのため平日は子どもと過ごす時間がほとんど確保できません。ですから、休日は自宅近くの公園にお弁当を持って遊びに行ったり、息子が夢中になっているゲームを一緒に楽しんだりして過ごしています。
今後の目標についてですが、まずはデータの電子化への対応です。私が入職した当初、CRF(症例報告書)は紙に記載する形式が主流でしたが、この10年間で電子化が進み、今では WEBを通してデータ入力するのが主流になっています。2020年4月からは、医薬品に関する承認申請時には電子データの提出が義務化されました。
また、最近では、スマートフォンやタブレットを用いて、患者さんご自身で症状に関するデータ入力をしていただくケースや、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、オンライン診療など来院に依存しない臨床試験も増えてきましたので、これらのデータ収集方法の検討や運用に携わった経験がまだ乏しいため、今後は急速に進むIT技術の進歩とともに、自身の知識も深め、業務内容の変化に対応していかなければと考えております。
課題としては、新人教育のことがあります。入職してから10年が経ち、数年前からはデータマネジメントグループのリーダーとなり、新人に教える側の立場になりました。私自身が業務の実践を通して学んできた経緯があるため、データセンター内で規定されている業務手順から始まり、一から業務を説明することは大変難しく、どのように教えていくべきか日々悩んでいます。現在、データマネージャーは私も含めて5名が在籍していますが、皆それぞれバックグラウンドや考え方が異なる場面もありますので、全体を見た時にどうしたらデータマネジメント業務が効率よく進むかを考えることが、今の私の課題です。

休日は近所の公園やテーマパークで息子さんと過ごしリフレッシュする鈴木さん。

*1 CRIETO:臨床研究推進センターのこと。安全で有効な薬や医療機器の開発を支援する。

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鈴木 貴世(すずき たかよ)

岩手県盛岡市出身。信州大学人文学部文化コミュニケーション学科卒。2011年、東北大学未来医工学治療開発センター(現CRIETO)に入職。

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