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気になる症状 すっきり診断

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気になる症状 すっきり診断 2024.08.21

歯科矯正治療の開始時期

矯正歯科 准教授 |北浦英樹

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歯、顎の状態見極め決定

 「歯の矯正治療はいつ頃始めたらいいのか」と尋ねられることがありますが、最適な開始時期は患者さんの状態によって異なり、治療時期は大きく二つに分けられます。子どもの矯正治療(第1期治療)と永久歯の矯正治療(第2期治療)です。また、第2期治療には、一般的な矯正治療と顎の手術を伴う外科的矯正治療があります。

成長期の子対象

 第1期治療は、小学生から中学生の前半ぐらいの成長期の子どもが対象となります。歯並びの改善、永久歯が正常な位置に生えるスペースの維持と確保、舌突出癖(舌で前歯の裏側を強く押しながら飲み込む癖)などの習癖の解消、および顎の骨の成長のコントロールなどを行います。

 例えば、下の顎や上の顎の骨が小さい場合には、小さな顎の成長を促す治療を行います。逆に上の顎の成長が大きく、前に出ている場合は、上の顎の成長を抑える治療をします。これらの矯正治療により、顎の骨の前後、上下のバランスを改善することで、歯並びだけでなく、口元の見た目や口唇の閉鎖機能を早期に改善することができ、その後の治療を容易にすることができます。また、第1期治療を行うことで、永久歯の抜歯や外科的矯正治療を回避できる場合もあります。

 一方、第2期治療は、主に全ての歯が永久歯に生え替わり、顎の骨の成長がある程度終わった人を対象とした矯正治療になります。早ければ中学生の後半から始められます。全身的な病気がなく、歯や歯を支える歯周組織が健康であれば、何歳になっても治療は可能です。

ブラケット装着

 第2期治療は、マルチブラケット装置と呼ばれる矯正装置で治療します。この装置は、歯に接着剤でブラケットと呼ばれるボタンを直接取り付け、ボタンの溝に針金を装着し、針金によって生じる力(矯正力)を利用して歯の移動を行います。第2期治療では、永久歯の歯並びはもちろんのこと、口元の見た目を良くすることやバランスの良いかみ合わせの獲得を目的とします。これにより生涯にわたり良い歯並びで健康に過ごせるようになります。

 矯正治療を開始する時期は、成長の状況やその後の成長、顎の骨の状態、乳歯や永久歯の状態、習癖、性格、家庭環境など多くのことを考慮して決めなければなりません。そのため適切な治療開始の時期は、歯科医院で問診?診査?検査を行い決める必要があります。適切なタイミングで行うことで最大限の治療効果を短期間で得ることができます。気になったら早い時期に歯科医院にご相談することをお勧めします。

河北新報掲載:2021年4月9日

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北浦 英樹(きたうら ひでき)

長崎県出身。1991年長崎大学歯学部を卒業。長崎大学助教、米国Washington University in St. Louisポスドク研究員として勤務。東北大学病院講師を経て、2013年顎口腔矯正学分野准教授に就任。専門は歯科矯正学。

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