あいさつ
2015年5月から緩和医療部長を務めております井上彰と申します。当院では、2000年10月に国公立大学の大学病院としては初めての緩和ケア病棟が開設されましたが、その半年後の2001年4月、院内での緩和ケアの啓発と緩和医療を担う人材の育成という役割を担って緩和医療部が設立されました。現在は部長を緩和医療科教授が兼務し、以下、副部長(准教授枠)、助教、看護師長各1名という構成となっています。
「都道府県がん診療連携拠点病院」である東北大学病院には、地域全体の緩和ケア充実に向けて指導者的役割を担うことが求められています。その中心として2015年7月に新設された「東北大学病院緩和ケアセンター」は、前出の緩和ケア病棟に加え、他病棟で入院中の患者さんに対する緩和ケアを支援する緩和ケアチーム(通称サポーティブケアチーム)、外来通院中の患者さんに対する緩和ケアを支援する緩和ケア外来を有機的に統合する組織として、院内がんセンターの下部に位置づけられ、緩和医療部と緩和医療科、看護部ほかから担当スタッフが供出されています。
緩和ケア病棟には2021年度144名の末期がん患者さんが入棟されました。緩和ケアチームは、新規依頼件数は2020年度に500件を突破。2021年度も514件と高水準を保っています(近年は心不全などの「非がん疾患」への依頼も増えています)。なお、当院では2016年度から本格導入した「苦痛のスクリーニング」の活用により、苦痛が強いがん患者さんには主治医の紹介を待たずに緩和ケアセンタースタッフが能動的に介入する「攻めの緩和ケア」が実践され、必要に応じて「緩和ケアチーム」や「緩和ケア外来」もしくは「がん看護外来」へと繋いでいます。患者さんの半数以上は「抗がん治療中」もしくは治療以前からの介入であり、世界的な標準となっている「早期からの緩和ケア」を実践しています。以上の活動以外にも、各種セミナーや研修会を通じた院内外の医療スタッフの緩和ケアレベルの向上、地域の病院や在宅ケア施設との連携強化などに努め、地域全体に質の高い緩和ケアが広まることを目指しています。